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認知症

①認知症とは?

<ポイント!>

脳の病気や様々な原因により、もの忘れなどの認知機能が低下し生活が困難になった状態です。

認知症は、「後天的に認知機能障害が進行して生活に支障をきたした状態」と定義されます。

つまり、成人になって一度正常に発達した認知機能が、何らかの病気によって徐々に低下し、日常生活や社会生活が単身で行えなくなった状態をいいます。

②認知症の原因は?

<ポイント!>

「認知症」は「アルツハイマー病」と同じ意味ではありません。

認知症とは、認知機能が何らかの病気によって進行性に低下し日常生活に支障をきたした「状態」のことで、その代表的な病気が「アルツハイマー病」です。

認知症の原因はいくつかの種類があります。

アルツハイマー病は、認知症の原因の中では最も多く、脳の機能や神経が障害を受けて脳が萎縮をするといった変性を起こす病気です(アルツハイマー型認知症)。

また脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で認知症が起こるものは血管性認知症といわれています。

障害された脳の場所によって症状が異なることがあり、認知機能障害の程度や状態も様々です。

急に症状が出現したり段階的に悪くなったりすることがありますが、ゆっくりと症状が進行する場合もあります。

その他、レビー小体型認知症という病気では、現実には見えないものが見えるといった幻視や、体が震え歩行が小刻みで転倒しやすくなるといったパーキンソン症状がみられることがあります。

認知機能の変動を伴うことが多いです。

③認知症の症状は?

<ポイント!>

認知症の症状は以下の2つに大きく分けることができます。

  • 1. 中核症状(認知機能障害)
  • 2. 行動・心理症状

1. 認知症の中核症状とは?

もの忘れ(記憶障害)や時間・日付、場所、人物が分からなくなること(見当識障害)などがあり、理解力や判断力、物事をうまく実行する能力が低下することが挙げられます。

具体例

◎さらに詳しく!もの忘れと記憶障害について

もの忘れという言葉は、例えば「最近“もの忘れ”が気になります」「“もの忘れ”がひどくなりました」「“もの忘れ”外来を紹介されました」というような使い方をすることが多いです。

ここではいったん、“もの忘れ”という言葉を「記憶障害」とほぼ同じと考えて説明をします。

記憶とは以下のという3段階で構成されています。

この記憶に関して、人の脳の中で重要な役割を果たしているのが「海馬(かいば)というところです(加えて海馬の周辺にある脳、例えば海馬傍回(かいばぼうかい)なども関与しています)。

ここは加齢による変化を起こしやすく、またアルツハイマー病においても早い段階から病変が起こりやすいことが知られており、老化によるもの忘れやアルツハイマー病による記憶障害に影響しています。

◎さらに詳しく!認知機能障害について

代表的な認知機能について少し詳しく説明をします。

1. 記憶と学習

新しい知識や経験を覚えたり、過去の出来事を思い出したりする能力で、この能力に障害が起こると「記憶障害」があるといえます。

これまで述べた通り、一般的に「もの忘れ」といった状態の多くはここに当てはまると考えられます。

2. 言語(ことば)

言葉を理解したり表出したりすること(言葉としてあらわすこと)、また言葉の意味を理解していることなどが挙げられます。

この能力の障害は「言語障害」や「失語(しつご)」と呼ばれます。

よくみられる症状として「言いたいことが出てこない」「あれ、それ…といった表現が多くなる」といった喚語(かんご)困難や、「言葉の意味がわからなくなる(例えば、机や飛行機という言葉の意味や知識がわからなくなる)といった意味記憶の障害があります。

3. 注意力(複雑性注意)

人はいろいろな刺激の中から必要とする刺激を選別して、そこに注意を払い維持しています。

このような能力の低下は「注意障害」と呼ばれ、間違いが多くなったり、なんとなくぼんやりしたりしてうまく作業や活動が行えないことが起こります。

4. 実行機能(遂行機能)

実行機能とは「何かを行おうとする時に、計画を立てて適切に進め、順次見直しをして最後まで実行する能力」のことをいいます。

この能力の障害は「実行機能障害(あるいは遂行機能障害)」と呼ばれますが、代表的なものとしては料理や日曜大工のような手順がいくつも必要な作業ができにくくなることがあります。

5. 知覚・運動

明らかな麻痺がないのに動作がうまく行えないといった「失行(しっこう)」、視覚など感覚器官に障害はないのにその対象を認識できない「失認(しつにん)」、また空間的な感覚や身体的な距離感がわからなくなる「視空間認知障害」などがあります。

6. 社会的認知

人は社会の中で自分以外の人と交流し、常識的で状況に適した行動を行っていますが、認知症の症状で、このような能力が障害された「社会的認知の障害」を認めることがあります。

「わがままな行動を繰り返す」「怒りっぽい」「抑制が全く効かない」「同じ言動を繰り返す」「人柄(人格)が変わった」「万引きをしてしまう」といった困った行動や、「気力がない」「周囲の状況に関心がない」といった意欲や関心の低下がみられることがあります。

典型例では「前頭側頭型認知症」という認知症のタイプで出現します。

2. 認知症の行動・心理症状とは?

 

認知症の行動・心理症状は、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略)と呼ばれています。以前は周辺症状と呼ばれていました。

攻撃的な行動、イライラや落ち着きのなさ、不安、うつ、幻覚や妄想といったものがあります。

(具体例)

④認知症の診断は?

<ポイント!>

専門医が総合的に診察し診断をします。安易な診断は禁物です!

認知機能の低下の始まりや経過など詳細な臨床経過が重要です。

またどのような認知機能の低下があり、日常生活にどのように影響しているかといった情報を検討します。

神経学的な検査や会話・態度の診察

実際の診察では詳細な経過を問診することはもちろんのこと、神経学的な検査を行ったり(例えば、歩行障害や振戦、パーキンソン症状がないかなど)、診察場面での会話や態度から認知機能の特徴を推察したりします。

精神状態の診察

精神症状も重要です。

うつ状態や妄想、幻覚、怒りっぽさ(易怒性)や興奮、人柄(人格)の変化など専門的に診察を行います。

必要に応じた画像検査

画像検査も有用です。

問診から必要性を考慮して、頭部CTや脳MRI検査、脳血流検査などを行います。

血液検査では甲状腺ホルモンの異常やビタミンの欠乏を調べます。場合により髄液検査や脳波検査を行うことがあります。

認知機能検査としては、まずスクリーニング検査として改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R、長谷川式などと呼ばれています)やミニメンタルステート検査(MMSE)を行います。

さらに詳しい検査は、専門の臨床心理技術者(公認心理師や臨床心理士)が担当することが多いです。

その他、認知症と紛らわしい病態や他の病気の合併など、総合的に判断して診断を行います。

最近ではうつ病との鑑別やうつ病から認知症への移行、睡眠や睡眠薬の影響などがよく話題となっておりその点を検討することも重要です。

いずれにしても、十分に経験を有する認知症の専門医に相談されることをお勧めします。

⑤認知症の治療は?

<ポイント!>

まず、治療可能な認知症や治療により改善する状態がかくれていないか、しっかり見極めることが大切です。

治療は、認知症の原因をよく探索してから判断します。

認知症の中には、治療が可能なものがあります。

例えば、正常圧水頭症は代表的な治療加療な認知症です。

甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症、感染症による認知症なども治療可能で、ある程度の改善が見込めます。

しかし、アルツハイマー病やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症といった認知症の原因となる代表的な脳の変性疾患(中枢神経変性疾患)は、残念ながらその病気を直接根治する治療法はありません。

進行を遅らせたり症状を少し改善させたりすることが期待できる薬はあります。

アルツハイマー病の治療薬では、塩酸ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、レビー小体型認知症では塩酸ドネペジルが薬として認可されています。

専門医とよく相談の上、服薬を検討されることをお勧めします。

◎さらに詳しく!
1. 認知症の中核症状に対する治療は?
2. 認知症の行動・心理症状に対する治療は?

1. 中核症状に対する治療

アルツハイマー型認知症では、塩酸ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン(コリンエステラーゼ阻害薬)やメマンチン(NMDA受容体拮抗薬)が現在使用可能で有効性が認められています。

レビー小体型認知症では塩酸ドネペジル(コリンエステラーゼ阻害薬)が保険適用で認められています。

血管性認知症に対しては、脳血管障害の再発予防といった生活習慣病の治療が重要と考えられています。

いずれにしても薬以外の対応やケアが重要です。

介護保険制度による介護サービスの利用は最重要で最初に検討されることが多いです。

また認知症の困りごとの段階、つまり重症度によっても対応が異なり「2.認知症の行動・心理症状の治療」で述べるような治療や対応を組み合わせ、認知症のご本人にとって最も適切な対応を行っていく必要があります。

薬を処方して終わりといった考えは禁物です。そのため認知症の専門医とよく相談する必要があります。

2. 認知症の行動・心理症状に対する治療

まずお薬以外の対応を行います。

環境を整えたり適切なケアを行ったりします。

認知症の方の抱える不安や喪失感といった心情を理解するように努めます。

また認知症に携わっている介護者にもケアが必要です。

たいへんな苦労をされている方が多いかもしれません。

医師や看護師、ケアマネージャーや介護スタッフなど多職種で協力して取り組みます。

いろいろな介入を行っても興奮や暴力といった行動・心理症状の改善が難しい場合、薬物療法を検討します。

お薬による副作用、特に転倒・骨折の危険性が高くなることは要注意です。

認知症の方とご家族のご苦労を和らげられるよう、できるだけ最小量で慎重に投与します。

薬を処方して終わりではありません。お薬の中止や終了の判断も大切です。

そのため認知症の行動・心理症状に精通した(例えば精神科や心療内科)専門医にご相談されることをお勧めします。

⑥認知症と診断されて、その先のこと…

これまで、認知症に関する症状や診断、治療を述べてきました。

もっと詳しい情報を希望されている方もいらっしゃると思います。

また、診断やお薬の処方も受けられ、介護保険サービスの利用も開始する予定ではあるけれども「その先のことが知りたい」「自分はどうなるのか」「病気は進むのか」「家族としてはどう対応していいのか」と悩んでいらっしゃる方がいるかもしれません。

またここでは詳しく説明できなかった「認知症の行動・心理症状に対する具体的な対応」はどうしたらいいのかといった疑問をお持ちになっているかもしれません。

まさに、この先のことが大切だと私は思っています。

日々の診察の中で、患者様やご家族、支援者の方と話し合うこと ―ちょっと工夫をして笑顔が戻ったり、時にまた困ったり悩んだりすること― ここでは紹介できない、その人、その家族のいろいろな物語があります。

そのようなことを気軽に相談できる専門医や医療機関をみつけておかれることをお勧めします。