<ポイント!>
女性のメンタルヘルス対策はとても重要です。うつ病に関しては、女性の方が男性よりも約2倍病気にかかりやすいことがいわれています。
女性のメンタルヘルス・うつ病対策は、女性特有の問題を十分に考えなければなりません。
うつ病では、女性が男性より約2倍罹患しやく、気分障害全体(うつ病や双極症を含む)では、女性が男性より約1.5倍多い傾向が続いていると報告されています。
月経や妊娠、出産、更年期といった女性ホルモンの変化の影響と、それぞれのライフステージにおける女性特有のストレス因が重なり合ってメンタルヘルスの不調をきたすと考えられます。
①月経前症候群と月経前不快気分症
<ポイント!>
月経前症候群や月経前不快気分症は決してまれな病気ではありません。適切な治療があることを是非知ってほしいと思います。
月経前症候群(PMS:premenstrual syndromeの略)
月経の数日前からさまざまな身体症状や精神症状が出現し、月経が始まると症状は消失します。
月経直前に最も症状が強く、月経周期に合わせて症状を繰り返すことが多いです。
月経のある女性の約20~50%の方が経験する症状です。
- 精神的な症状:抑うつ、不安、いらいら、怒りっぽさ、情緒不安定さ、集中力の低下など
- 身体的な症状:腹痛・腹部膨満感、乳房の痛みや緊満感、頭痛、浮腫(むくみ)、甘いものが欲しくなるといった食欲の亢進または食欲不振など
通常は、特別な治療を必要とせず生活に支障をきたすことはありません。
月経前不快気分症・月経前不快気分障害(PMDD:premenstrual dysphoric disorderの略)
月経前症候群(PMS)よりも重症で特に精神症状が強くあらわれます。
うつ病と同じぐらいつらい症状(うつ病の症状)が強く出現することがあります。
そのためさまざまな活動が困難となり日常生活に支障を来たします。
1.精神的な症状の特徴
- 激しい感情の変化、不安定な状態
- 激しいいらいら感や怒りっぽさ
- 強い抑うつ状態や絶望感、自己否定的な考え
- 対人関係において摩擦が増えてしまう など
2.治療
治療は薬物療法や食事療法、精神療法などを行います。
- 薬物療法は、精神症状に対して抗うつ薬SSRIを使用します。症状に合わせて黄体期にのみ服用する方法があります。服用方法や用法・用量は専門医にご相談ください。身体的な症状に対してむくみに対する利尿薬の使用や、さらに経口避妊薬やホルモン療法といった婦人科で処方される薬剤が使用されます。漢方薬が用いられることも多いです。
- 食事療法は、アルコールやカフェイン、塩分などの制限を行います。また定期的な運動やリラクゼーションを取り入れることも大切です。
- 精神療法は、認知行動療法や対人関係療法を行うことがあります。
いずれにしてもこのような「月経前症候群」「月経前不快気分症」という病気があること、そして適切な治療があることを是非知って頂きたいと思います。
②マタニティー・ブルーズと周産期うつ病
マタニティー・ブルーズmaternity blues
出産後3日から5日頃に気分が落ち込んだり不安定になったり、またいらいらが強くなったり涙もろくなったり気分の変化や不安が強くなる状態です。通常は出産後10日頃に自然に軽快します。
周産期うつ病
以前は産後うつ病と言われていました。
妊娠中や出産前後の期間(周産期と呼びます)にうつ病が発症することがあります。
産後の女性ホルモンの急激な変化によるセロトニン系の調節異常が原因と考えられています。
周産期は母子ともにとても重要な時期です。
そしてうつ病や気分障害による精神症状の重症化は自殺や衝動行為に発展することがあります。
心当たりがあれば是非とも専門医にご相談ください。(うつ病の治療)
③更年期障害と更年期(閉経周辺期)うつ病
更年期障害
女性の更年期は閉経の前後45~55歳頃に相当し身体的にも精神的にも変調をきたしやすい時期です。更年期障害はこの時期に起こるさまざまな症状や状態を指しています。
更年期(障害)の主な症状
- ほてり・のぼせ・発汗(ホットフラッシュ)、冷え症、動悸
- 手足のしびれ、感覚が鈍ること
- めまい、耳鳴り、頭が重い、頭痛、全身のだるさ(全身倦怠感)
- 不眠、抑うつ気分、いらいらや不安
- 肩こり、腰痛 など
「不定愁訴(ふていしゅうそ)」といわれる、検査をしてもはっきりした異常がみつからない自律神経の調節障害に関係した症状が多くみられます。
卵巣機能の低下から女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下することが原因ですが、心理的、環境的な変化も関与し無視できません。
治療は、ホルモン補充療法や漢方薬が使用されます。心理的・精神的なケアも大切です。
更年期(閉経周辺期)うつ病
女性の更年期は心身ともに変調をきたしやすい時期です。
特に閉経前45~49歳頃はうつ病が発症しやすいといわれています。
更年期障害とうつ病が合併していたり、他の精神疾患が合併していたりすることもあります。
女性特有のストレスに配慮して治療を進めることが大切です。(うつ病の治療)